古文 雑感

京・関東比較(徒然草より)

 

 「考えておきます」「結構です」

 これらは果たして否定語?それとも肯定語?私が生まれ育った地域(関西圏)ではほぼ100パーセント「否定語」です。が、が、が、人によってはほぼ100パーセント「肯定語」でしょう。

 「考えておきます」≒「真剣に前向きに検討します。」「結構です」≒「素晴らしいですね。」となるのです。関西圏は先の言葉を否定語、逆に関東圏では肯定語として使われることが多いです。私は関西では、「断りたい」ときは「無理です」「いりません」と言いづらい時は「考えておきます」と逃げています(苦笑)。

 ところで地域によって同じ言葉でもニュアンスが違うことは、鎌倉時代からすでに見られる傾向だったようです。徒然草141段がまさに京・関東の比較論になっています。以下は141段の口語訳の一部です。

 (都の人は)一般に心が穏やかで、思いやりがあるために、人が言う(頼む)ぐらいのことは、きっぱりと断わりにくくて、万事につけて、遠慮なく言うことができないので、気弱く引き受けてしまうのです。(中略)東国の人は、私の出身の人ではありますが、本当は心の優しさがなく、人情味に欠け、まったく無愛想なものなので、初めからいやだと言って終わってしまうのです。

 東国の人が人情味に欠けるというのは言い過ぎと思わなくもないですが、東国出身の人がこの発言をするからこそ角が立たず、京の人を批判するタイプに対して説得力を持つと思います。

 生活空間といった環境が生み出す気質が800年以上経ってもさほど変わってないことに対して興味を覚えると同時に「郷に入っては郷に従え」という諺が頭に浮かんできます。侮ることなかれ古典・諺・慣用句です!

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