鑑賞

漱石枕流

 世の中には「知らない方が良かった・・・。」という物事があります。一方「知らなくても問題は全くないけれど、知っている方が楽しい!」ということも存在します。その一つが、ちょっとした表現や知識でしょう。

 今日、知人に「流石!」と書いた際に私は「この『流石』も夏目漱石の『漱石』も中国の故事から来てるんだよね~、ウフフ。我ながらマニアック。」と思わずニヤニヤしていました。どうでもいいことですが、由来などを知って使うのは楽しいです。

 古代中国、晋の孫楚という人物が、友人に「石を枕にして、川の流れでうがいをするように、自然の中で暮らしたい」と言おうとしたところ、間違って「石でうがいをして、川の流れを枕にするように……」と言い間違えてしまいました。※「漱」は「うがい」の意味です。

 その言い間違いを突っ込まれた時に「石でうがいをするのは、歯を磨くためだ。川の流れを枕にするのは、耳を洗うためだ!」と言い逃れをした孫楚。ツッコミを入れた友人は「すばらしい機転だ、さすがだ」と思ったことから「流石(さすが)」となったそうです。

 ところで、「漱石枕流」という表現は「負け惜しみの強いこと」を意味する四字熟語にもなっています。ここからペンネームを取ったのが、かの文豪・夏目漱石。本名は夏目金之助です。

 知らなくても困らない、けれど知っていると楽しい・・・という物事は人生を豊かにしてくれます。「知らない方が良かった・・・」と落ち込んだり悲しんだりすることよりも、よほど健康的です。

 むろん単なる自己満足かもしれませんが、少なくとも人を悲しませたりしない点が「いいなあ~」と思います。 

 

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