ただ、所々丹塗の剥げた、大きな円柱に、蟋蟀が一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする市女笠や揉烏帽子が、もう二三人はありそうなものである。それが、この男のほかには誰もいない(「羅生門」芥川龍之介著)
上記は小説「羅生門」冒頭の一部です。この文章からどんな印象を受けますか?いわゆる情景を書いているだけですが、いかにも寂しそうな、そして暗い雰囲気が分かりますよね?
実は風景を描きながら、それが登場人物の心情を比喩的に表している…という技法が小説では良く用いられます。それを「心象風景」と言います。この心象風景をしっかりと読み取らないと点数に結び付きません。例えば、
①寒い夜、主人公が貧しい生活でボロボロの衣服をまとっていた。
②自分も困窮している主人公が困っている人助ける。
③主人公は着ている服すらなくなってしまい下着だけになった。
④木々がそよそよと爽やかな風で揺れていた。
上記の④の文章に線が引いてあったとします。そしてこの時の主人公の気持ちはと聞かれたら正解は次のどれでしょう?
➀何もなくなって寒くて仕方ない
②困ってる人を助けてあげることができてとても気持ちは爽やか
③風がとても気持ちよくて嬉しい
④この先どうしていいか分からず不安だ
皆さんだったどれ選びますか②と③で迷うでしょう。答えは②です。今、寒い時期に下着一枚。そんな中「爽やかな風」という表現で主人公の気持ちを比喩的に表しているのです。
ダイレクトに言葉通りにとるのではなく、風景から登場人物の気持ちを読み取る場合がある!これを意識してほしいと思います。