鑑賞

春の土用

 「土用」と聞いて、夏のうなぎを思い浮かべる方は多いでしょう。しかしこの語は本来、立春・立夏・立秋・立冬それぞれの直前、約十八日間を指す言葉であり、

 実は春にも「春の土用」が存在します。の春の土用はまさに昨日・四月十七日(金)から始まり、五月四日(月)まで続いています。

 五行思想において「土」は木・火・土・金・水の真ん中にあり、木・火・金・水の四元素の間を調停する存在とされ、季節の橋渡し役を担います。言葉の構造そのものが、自然観を映し出しているのです。

 さらに「用」の字には「働き」「作用」という意味が込められています。つまり「土用」とは単なる期間の呼称ではなく、自然のバランスが静かに動き始める時期——という能動的なニュアンスを持つ言葉なのです。

 今年の春の土用には「戌の日」が四月十八日と四月三十日の二度訪れます。戌の日には「い」のつく食べ物や白いものを口にするとよいとされています。日本語には、こうした思想的背景を一語に凝縮する力があります。

 「土用」という二文字の中に、五行思想・季節観・自然との共生という豊かな世界観が折り畳まれています。記号として言葉を使うのではなく、その由来や構造に目を向けることで日常が豊かになります。

 カレンダーの上では大型連休の谷間として過ぎてしまいがちなこの時期が、実は「春から夏へ、自然のバランスが整えられる十八日間」であるとわかると、風の感触も、空の色も、少し違って見えてくるかもしれません。

 季節の言葉をたどることは、言語を通じて先人の自然観に触れる静かな知的営みでもあるのです。

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