今日は美しい満月でしたね。思わず私は夜、仕事を終えてから外に出てぼやーっと月を眺めていました。おとといの中秋の名月から続く、空一面の輝きは、多くの人の心を静かに満たしてくれたのではないでしょうか。
太古の昔から、日本人は月に特別な思いを抱き、その一瞬の感動を和歌に託してきました。平安時代の歌人が感じた「究極の美」と、令和での感性はきっと変わらないものです。
この時期の月を讃えた一首をご紹介します。
藤原為家
「月おもしろかりし宵々も、 昨日けふの夜にはまさるものなかりけり」
(訳)これまでにも月が美しいと感じた夜はいくつもあったが、昨夜や今夜の月ほど素晴らしいものはない。
ここで詠まれている「おもしろし」は現代の「面白い」という意味だけでなく「趣がある」「風情がある」という賛美の言葉です。
過去に体験した全ての月の美しさを引き合いに出しても、この中秋の月の輝きには及ばないという、歌人の感動の深さが伝わってきます。
私たちは毎日、慌ただしい日々を生きていますが、時を超えて同じ月を見上げ、同じ感動を分かち合えるのはとても素敵なことです。
新しい季節の始まりに、たまには立ち止まって夜空を見上げ、変わらぬ月の光に心を洗う・・・。そんな豊かな時間をこれからも大切にしていきたいですね。