古文 雑感

言葉のまじない

 鎌倉時代の随筆『徒然草』には、くしゃみをめぐるユニークなエピソードがあります。

 ある老尼が「くさめ、くさめ」と呟き続け、その理由を尋ねると「坊ちゃまがくしゃみをしたかもしれない。まじないを唱えねば命に関わる」と語るのです。

 古代では、くしゃみの瞬間に魂が抜け、悪霊が入り込むと信じられていたとか。そこで「くさめ」や「くそ喰らえ」といった呪文を唱えて大切な坊ちゃまの身を守ろうとしたそうです。
 
 この「魂が抜けてしまう。。。」という思想ゆえに文字として書く際にも名前を書かないことが多い、つまり主語が省略されています。受験生泣かせですが💦

 さて、現代の私たちにとっては、花粉症の季節に毎回唱えるのは大変そうですが、心を落ち着けるための言葉と考えれば、それもまた一つの“まじない”ですね。

 ちなみに「くさめ」の語源には諸説あり、私は「休息万命(くそくまんみょう)」説が好きです。意味がなんとなくありがたいので(笑)。簡単に言うと「とにかく長生きできますように」となります。

 さて、私自身もネガティブな言葉をつぶやいてしまった後は、すかさず「大丈夫、大丈夫」と唱えるようにしています。気休めかもしれませんが、言葉に出すことで思考が変わり、自分の心をリセットできます。ぜひ皆さんもお試しを。

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