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小僧の神様

 志賀直哉の短編作品に「小僧の神様」があります。この小説は、仙吉という秤屋の丁稚をしている13,14歳の小僧(仙吉)と、Aという若き貴族院議員が主人公です。一行で言うと「ある日の小僧の様子(お寿司を注文するも、お金が足りなかった)を見たAが後日に口実を作り、名前を隠して小僧さんにお寿司をごちそうする。」のです。

 

 しかし、Aは自分のしたことは偽善なのでは?こんなことを気の小さな自分がしなきゃよかったと思い、小僧の方は悲しい時、苦しい時にはその客のことを思うようになり、いつかまた思わぬ恵みをもってあの客が現れるのではないか、と思うようになります。

 

 深読みをすれば?!Aの行為は上から目線(同情心)で「対等ではない」といった倫理観にたどり着くかもしれません。でも、個人的には小僧さんが未来への希望を持てるような素敵な行為だった、小僧さんが将来出世して番頭にでもなった時に、若くておなかをすかせながら頑張っている丁稚奉公の小僧さんたちに御馳走してあげてほしいと思うのです。

 

 人間は大人になって経済的に余裕が出来て好きなものを好きなだけ食べるものよりも、意外と苦しかったころに仲間同士で食べたおにぎりやカップ麺のことをおいしかった思い出として感じるものなのです。

 

 ちなみ・・・私は最近、昔のことばかりが夢に出てきます。しかも必ず「行き詰る」「困っている」場面ばかり・・・。まだまだ苦しかった頃のことを「思い出」としては認識できていないようで。。。修行が足りませんね(苦笑)。

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